フットボールフロンティア関東地区予選決勝。
雷門中学は見事帝国学園に勝利を収め、全国大会へとコマを進めた。
表彰式を終えた帝国学園のグラウンドで、円堂と鬼道は話合っている。
それを少し離れた通路口で所でと豪炎寺は見ていた。
「……
「なあに、修也くん」
靴を履いていないの足元を見て豪炎寺は名前を呼んだ。
ふわり、と笑っては首を傾げた。
豪炎寺は眉間に皺を寄せる。解っているくせに、この期に及んで誤魔化す気なのだろうか。
「お前、靴はどうした」
んー、と小さく考え込む仕草をしたが困ったように視線を逸らす。視線が戻ってきた時には苦笑ではぐらかされた。
薄暗い通路から、陽のあたるグラウンドの二人に視線を向けては口を開いた。
「鬼道くん、足の怪我大丈夫そうだね」
なぜお前がそれを知っている、と豪炎寺はを半ば睨むように見る。話を変えようとするな、という意味も込めたのにそこは受け取ってもらえなかったらしい。
あはは、と笑ったが「音無さんにね」と答えた。
聞いてもいない事には答えるくせに訊いた事には答えないのだ。今だって、は豪炎寺の質問に答えていない。
「全国大会進出、おめでとう」
、今はそんな事を聞きたいわけじゃない。お前が迷子になんかなるはずないだろう」
「やだな、実際になったじゃない」
「ふざけるな」
豪炎寺の言葉には眉尻を下げて微笑む。
昔からこうだ。自分に都合の悪い事があるとは黙り込んで、今みたいに笑う。
そうなれば、経験上の口から知りたい事聞く事はできない。自身が話すと決めるまで口を割りはしないのだ。
「さ、帰ろ? 円堂くんたちはもう少し話すみたいだし」
小さく笑みを浮かべてはグラウンドに背を向けた。くるりと動きに合わせて黒髪が動く。その一束を豪炎寺は掴んだ。
くん、と僅かな抵抗を受けが頭を抑えて振り返る。痛い訳ではないだろうが、口を尖らせて不服そうだ。
「お前、秋葉名戸の事を忘れていないだろうな」
「忘れてないよ」
「土門の事もだ」
「大丈夫だって、心配しないで」
全く納得がいかない。顔にそう出ていたのだろう。が呆れたように笑った。
未だ掴んだ髪を離さない豪炎寺手を取る。捕まえていなくとも逃げないと言いたいのか、は豪炎寺の指をほどいた。
「いつかちゃんと話すから」
そう言ってが再び背を向けて歩き出す。釈然としないまま、しかしそれに抗った所でなんの成果も得る事ができないのは予想済みだ。
溜息をひとつ吐いて豪炎寺もグラウンドに背を向ける。は既に暗い通路の向こうへと行ってしまっていた。
急ぐ程でもないとゆっくり後を追いかける。それに僅かに後悔したのは数十秒後のことだ。
出入り口から少し歩いた、通路の暗がりに壁にもたれ掛かるようにして座り込むの姿を見つけた。
慌てて駆け寄ると肩を掴み上体を起こさせた。咄嗟の行動で少し乱暴だったかもしれないとは考えもつかず、とりあえずの名前を呼んだ。
意識はあるようで、存外しっかりとした返事が聞こえて豪炎寺は息を吐く。
豪炎寺に体重を預ける形で身体を起こしているの前髪を手で払いのける。されるがままには長い睫毛を伏せていた。
先ほどまで全く気が付かなかったが、とても顔色が悪い。
薄暗い通路だという事が大いに関係しているとは思うが、それを差し引いても酷い。しかし、ここで倒れられでもしなければおそらく気が付かなかっただろう。
「ちょっと待ってろ、人を呼ぶ」
「大丈夫、ちょっとめまいがしただけだから」
苦笑するに少し不安は解消されたが、全く安心できないの顔色に豪炎寺は眉を顰める。
ひらひらと手を振って、は立ち上がった。
「馬鹿、おとなしくしてろ」
「大丈夫だって。帝国学園に居座るわけにもいかないじゃない」
苦笑したがそう言う。豪炎寺は深く溜息を吐いた。
豪炎寺がに背を向け腰を下ろす。ほら、と声をかけると、はきょとん、と瞬きを繰り返した。
「早く乗れ」
「乗れって……背負っていくつもり?」
「当たり前だ」
が妙なところで意地を張る奴だということは重々承知している。
しかし豪炎寺はそのの幼馴染だ。当然、同じように意地を押し通す性格の持ち主で、そしてがそこに弱いことを知っている。
壁についている手をそっと豪炎寺の肩に移動させたは小さく息を吐いた。
「……大丈夫?」
顔は見えないがどうせ不安と書いてあるのだろう。の声色は正直だ。
小さな子供ではないのだから、同じ年の女子くらい背負って歩ける。
大きく息を吐きだして、豪炎寺はを背負うと立ち上がった。






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