よく晴れた日。雷門中学の屋上に数人が座り込んでいた。
「どーするよ!? 決勝まであと二日! 二日で監督見つけなきゃならないんだぜ!?」
「あーもう! 規約なんか嫌い!」
染岡の言葉に木野が頬を膨らませて同意する。
土門と風丸が困ったように眉尻を下げた。
「皆のモチベーションも下がってるから、練習もなんだかなー、って感じだし」
風丸が頷く。
が話してくれたイナズマイレブンの事で少しはやる気が出たかと思えば、それはやはり監督不在で覇気を失ったのだ。
想定外のピンチに見舞われる。こんな事が待ち受けているとは思わなかった。
「なーんにもいい手が浮かばなーい!」
円堂はそう言って後ろに倒れて寝そべった。
ふと空を見上げ――たつもりでいたが空が見えない。
真上から「わ、円堂くん?」という声が聞こえた。
「?」
円堂がそう声を掛けると同時ぐらいに空が見えた。
続いて不機嫌そうな豪炎寺の声が円堂を呼ぶ。
体を起こすと眉間に皺を寄せた豪炎寺がの腕を引く形で立っていた。
急に視界が変わったのはが移動したからだろう。
「何を見ているんだ円堂」
「何って……何?」
きょとん、と目を丸くして円堂が尋ねる。
背後でざわ、と空気が動いた。
振り返ると風丸が苦い顔をしている。木野もだ。
染岡に至っては視線を逸らした。土門は苦笑している。
「女子の足元で寝そべるとはいい度胸じゃないか」
豪炎寺の声に引っ張られて視線を移動させる。
も苦笑していた。
「……えっ、あ、そういう……いや! 見てないぞ!?」
あれスカートか!
なんて言えるはずもなく、冷たい豪炎寺の視線と助けてくれそうにもない背後の人たちの間で円堂は狼狽えた。
風丸の名を呼んでも呆れたように「円堂……」と返されてしまった。
空気が居た堪れない、特に何が一番あれかって、豪炎寺の視線。
すげえ刺さる。当人であるはずのはちょっと困ったように笑っているけれど、豪炎寺が俺との間に入っててめちゃくちゃ怖い。
「修也くん、そのくらいにしてあげて。私たち円堂くん呼びに来たんでしょ」
が豪炎寺の腕を引く。
豪炎寺が視線をに動かして、ああ、と頷いた。
「円堂、校門のところで人が待っている」
「ひと……?」
「円堂くんに会いたいんだって。早く行ってあげないと不審者だから、ほら」
がそう言って校門の方角を指差した。
確かに、誰かが立っている。
「わるい、俺ちょっと行ってくるよ」
そういって立ち上がる。
豪炎寺の視線もこの空気も退散できるのならいいタイミングだ。
屋上の出入り口に小走りで向かう。扉をくぐる手前でに声を掛けられた。
「その人と話した後、もう一度響木さんに話をしてみなよ。きっとうまくいくよ」
「ん? よくわかんないけど、わかった!」
大きく手を振って屋上から階段を駆け下りる。
円堂のあわただしい足音を見送って、豪炎寺とは輪の中に入り腰掛けた。
「響木さんって?」
木野が首を傾げる。
が視線を向けてにこりと笑った。
「雷雷軒のおじさんだよ、昨日ちょっと話したの。あの人イナズマイレブンの正GKなんだって」
土門や風丸、染岡が興味なさげにふうん、と返事をした。
数秒の沈黙の後、全員が食いつく。いっぺんに声を上げられたので何を言っているのかわからなかったが。
そういえばメンバーについてはちゃんと話していなかったっけ、とぼんやり考えた。
「昨日はプレイスタイルについて話したんだよね」
「あと必殺技を少しな」
の言葉に豪炎寺が頷いた。
満足げにが頷く。
「あとは、監督の事も、全部円堂くんがなんとかしてくれるよ」
「はぁ? なんだよそれ……」
染岡が悪態をつく。
はそれに対して大丈夫、と笑っている。
「何か、いい考えがあるのか?」
風丸が首を傾げた。
それと同じように首を傾げて「何にもないよ?」とはけろりと言ってのけた。
なんだよそれ、という風丸の声に染岡が同意を示す。
木野が説明を求めるようにの顔を見る。
んん、と少し唸って、は笑った。
「根拠はないよ。強いて言うなら……」
「いうなら?」
「勘、かな」
は殊更面白そうに笑っている。
豪炎寺も木野も呆れたように笑っていて、染岡と風丸は顔を見合わせた。
「さて、そろそろ練習したほうがいいと思うよ。やる気がなくても休んじゃうと調子取り戻せないから、基礎練習だけでも、ね」
がそう言って立ち上がった。
豪炎寺も同意をし、風丸、染岡と立ち上がって屋上をあとにする。
「何とかなる、ね。なんか信じちゃうよなあ」
ぼそっと呟いた声に木野が振り返る。
「土門くん?」
「いーや、なんでもない。さ、練習行こうぜ」
頭の後ろで手を組んで、へらりと笑って見せる。
木野は一度首を傾げたきり、何も聞かずに笑って見せた。
翌日、円堂の一声によって部室に集められたサッカー部員は新監督の姿に驚きを隠せないのだった。
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