こつん、こつん、と足音を響かせながらは廊下を歩いていた。
一つ思いついた事を雷門イレブンに伝えるために観客席から降りてきたのだ。実際、スタジアムならそう簡単に控えまで入れないのだが学校という場所柄なのか、すんなり中に入ることができた。
それでいいのかなあ、と首を傾げながらありがたく内部を歩いているに文句は言えないのだが。
中の構造はよくわからないが、とりあえず声のする方に向かって歩いてた。初めはうまく聞き取れなかったが、どうも円堂たちらしい。
円堂お得意の勝利の女神、も聞こえている。
「データにない事は、決して起こりえない」
「データデータって!」
「データだって、初めて見る事象をまとめてできるじゃない。まだ起きてない事だって言い切る根拠はないわね」
ひょこり、と顔をのぞかせる。
驚いたように全員が振り返った。
、どうしてここに」
「悪いとは思ったんだけどね、ちょっと用があって」
御影専農のFWの前を通り過ぎて雷門へ歩み寄る。トイレの前で話し込んでいる図も中々におかしな感じだ。
キャプテンの杉森がちらりと視線を向けた。
「こんなタイミングで新たな事象が起こるなど考えにくい」
「あら、雷門を甘く見てると痛い目を見る事になるわ。泣かないといいわね」
「行くぞ、キャプテン。ここでの話し合いは無意味だ」
下鶴がくるりと路を返す。杉森も倣って足を進めた。御影専農が立ち去って行く。
「杉森! お前らに教えてやる! サッカーは面白いものなんだ、絶対に思い出させてやるからな!」
廊下の角を曲がる直前、円堂が杉森の背中に叫んだ。
杉森がちらりと振り返る。
「理解不能だ」
そう言って姿を消した。



こつん、こつん、と再び足音を鳴らして廊下を歩く。今度は複数の足音が一緒だ。
なあ、と隣を歩く修也が声を掛けた。
「お前機嫌悪くないか」
「機嫌悪いって、私が?」
ちらちらと、前方や後方から視線を感じる。きっと似たような事を感じていたのだろう。視線の主は二年生のようだった。
「普段ならあんな言い方しないだろう、お前。挑発してどうするんだ」
「あ、ばれちゃってた? 挑発するつもりはなかったんだけどね、なんか腹が立ったから」
あんなサッカーを見せられると腹も立つ。帝国学園のサッカーも気に入らないし、小手先サッカーなんて見ても面白くない。
円堂が大きく頷いた。相当ご立腹のようだ。
「そうだ、用事があったのよ」
「用事?」
雷門イレブンが首を傾げた。
そう、用事。とが繰り返す。
「修也くんはシュートの踏み込みもう少し強いほうがいいかもしれないわ。次打つ時試してみて」
「ああ、分かった」
ボールを蹴る力はそんなに伸びていないようだが、それ以外のところが伸びている。本番で試すことではないだろうが、力の入れ方を変えてみるのはいいと思う。
「あとは円堂くんに言いたい事なんだけど」
「俺? なんだよ」
ちょいちょい、と円堂を手招きする。
不思議そうに目を丸くした円堂が歩み寄ってきた。
「円堂くんちょっと気が早すぎ。GKに拘るならもう少しゴールに気を配ってあげてね」
「うっ……ごめん、がんばる……」
目に見えて肩を落とす円堂の背中をぽすんと叩く。
は小さく笑った。
「違うわ、そうじゃないの。確かにそれも大事なんだけど、円堂くんはGKに拘り過ぎない方が合ってるかもしれないって事よ。雷門に副GKがいない以上は仕方ないけれどね」
「……どういう意味だよ」
「そうね、円堂くんにできるのはボールを止める事だけじゃないって事よ。ちょっと考えてみて」
別に円堂にGKをやめろと言っているわけではないのだ。円堂がGKをするのはチーム全体にいい効果がある。最後に守っているのが円堂というのは士気を上げるのに一役買っている。
円堂自身、GKには思い入れがあるのだろうから、そう易々とやめろなんて事は言えない。
言われたことを素直に考えている円堂のそばからそっと離れる。
「じゃあ私はまた客席に戻るから」
「ああ、わざわざすまないな」
「後半も頑張ってね。あ、でもラフプレーはダメだよ。怪我しないようにね」
ひらひらと手を振って雷門イレブンに背を向ける。何人かが手を振り、何人かの返事が聞こえた。
観客席に戻ると佐久間がひらひらと手を振っていた。
遅かったな、試合始まるぞ。という佐久間にまあね、と適当な返事をして席に着いた。







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