がらんとした部室の戸口には立っていた。
中に入り辛い。
部活の時間であるが嫌に静まり返っている。
だが無人ではない。中には修也がいて、壁際に置かれた椅子の上に座っていた。
その椅子があるところも謎のバリケードに包まれた先で、は首を傾げっぱなしだ。
「なにしてるの修也くん」
「俺は別に何もしていない」
まあ確かに座っているだけなのだが、それにしたってこの状況はおかしい。
バリケードの一つをガラガラと動かして通路を作る。
きょろきょろと小さな空間を見回す。修也がそこに座れと指差した場所に腰を下ろした。横に鞄を置く。
「みんなはどうしたの?」
「秘伝書を手に入れると張り切って出て行った」
しれっと修也が答える。
ここに残っているという事は参加しなかったのだろう。まあ、騒動に巻き込まれたくない気持ちはよく分かる。
秘伝書は理事長室の金庫の中にあると雷雷軒の店主は言っていた。
何故そんなことを知っているのか、信用できるのか。色々疑問だが人様の金庫からどうやって秘伝書を手に入れるつもりなのだろうか。
「泥棒はよくないと思うんだけどなあ」
「普通に考えて金庫から取り出すなんて無理だろう」
簡単には取り出せないから金庫としての役目が果たせているのだ。修也の言葉には頷いた。
理事長室の金庫ならおそらく夏未が管理しているだろう。
そういうことなら夏未に尋ねようと考えていたのだが、どうも今日は朝から課外実習に出ているらしかった。事務仕事が残っている為、用事が終わったら戻ると聞いた。それまで待てばいいのだが、そもそも帰ってくることすら知らないのだろうか。
修也が尾刈斗戦、と呟いた。が同じ言葉を繰り返し訪ねる。
「の助言は相変わらず役に立つな」
「んー、別にそんな事はないと思うけど」
対して有益な情報をもたらした覚えはない。放っておいてもいずれ誰かが気が付いたような事だ。
一度見た事のある相手だからほんの少し気付くのが速かったというだけだ。
そしてふと思い返す。自分は一体いつ、尾刈斗中の試合を見たというのだろう。
何時だって修也と一緒にサッカー観戦をしてきたわけだから、きっと修也も一度は見ているはずなのだ。そして修也がゴールを奪えなかった試合など見た事が無い身としては、修也は一度も尾刈斗中と試合をしていないと言い切れる。
ただ尾刈斗中のチームメイトに見覚えはあるし、初心者であるの一言が役立つようなレベルなら修也がすでに攻略法を編み出していただろう。
つまりあの戦法で試合をしているところを修也と一緒に見たことはない、という事になる。
しかし修也と一緒に見ていないサッカーの試合などない。修也がフィールドの上にいたかどうかは兎も角としてだ。
「マネージャーになるつもりは、やっぱりないのか」
「そうだね、あんまりないかも」
もともと何かに所属する事はあまり好きではない。
自主的なお手伝いは好んでできるが、何かに所属した瞬間それが義務となってしまうのが嫌だった。
責任感のない事だとがついた溜息は、がらりと扉が開く音に消えた。
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