ふと、意識が覚醒して目を開くと、見慣れた天井が視界に入った。布団から体を起こす。カーテンを開けると眩しい光が部屋の中に差し込んだ。目覚まし時計を見ると、セットしておいたアラームの時刻より幾分も早かった。
習慣づいた、いつもと同じ、何の変哲もない朝。
それも当然のことで、昨日今日で何か突飛なことが起こるはずがないのだ。
というか、そうそう起こってもらっては困る。面倒ごとはあれきりで結構だ。
私は肩をぐるりと回して小さく息をついた。
いつもよりゆっくりと朝を迎えられるはずなのに、習慣というものはなかなか抜けないらしい。定時に目が覚めてしまった。
今日は始業式だ。私が通う学校、雷門中の。
普段とは違った一日の予定は遅い始まりを迎えるはずだった。それも過ぎた話で、目覚めてしまった以上は活動を開始するよりほかにないだろう。
いつも通りの時間に家を出て、ゆっくりと周りを見て歩こう。
そう決めて朝食の用意を始める。とはいえ、トーストに卵を焼くだけ、という簡単なものだが。昔から家事手伝いをしていたことがこんなところで役に立つとは思っていなかった。手の込んだことは流石にできないが、一人で生活する必要最低限のことは自分でできるので、今のところ困ったことはない。買い物に行くのが少し大変なくらいだ
朝食を胃に押し込むようにして食べる。急いでいるわけではないが、どうにも食べる速度が速いのだ。落ちついて食べなさいとよく言われていた。
使った食器を手早く洗うと制服に着替える。雷門中の制服は可愛いと評判のデザインだ。シンプルで、私も気に入っている。一年ほど着ても、まだまだ使えそうだと思えるくらいに丈夫な素材が使われているので買い替えの心配はいらないだろう。
大した荷物の入っていない鞄を肩にかけて、玄関を出る。戸締りの確認はしっかりと。
、と書かれた表札をするりと指先でなぞる。
私はまた小さく息を吐いて、行ってきます、とつぶやいた。
程よい広さの廊下を歩く。今日は時間があるから、階段で下に降りよう。エレベータはもとより苦手だから、その方がいい。
コの字型に折れ曲がる階段をゆっくりと下って、一階に降り立つ。広いエントランスからは桜の花びらが散っていくのが見えた。
今日から、雷門中学校の2年生です。
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