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同世代の少年より少しばかり大柄な自分から見れば随分と華奢な、幼馴染。
別段美人だとかカワイイだとか、特別頭がいいだとか運動ができるだとか、そういうことは全くない。
とはいえ、全くの不細工で運動もできず頭も悪い人間であるという事もない、ごくごく平凡な女の子だ。
強いて特筆するなら、少し変わった性格をしているかもしれない。
ペラペラと少し速いペースで雑誌を読み進めるが、雑誌から視線を動かさないままに口を開いた。
「げーんーだー」
「はいはい、なんだ」
「アイス食べたーい」
「部活の帰りに買いに行くか?」
そう尋ねればは満足そうに口元に笑みを浮かべ頷いた。
「早く部活終わらないかな」
「まだ始まってもいないぞ」
ちなみにここは帝国学園のサッカー部の部室で、ロッカールームにあたる場所で、現在自分は部活に向けてユニフォームに着替えているところだ。
制服を脱いでユニフォームに袖を通せば帝国学園のGKとして、それ以外のことを考えている暇はない。
普段ならそれでよそに移ろうこともない気持ちが、今日は少し浮ついている。
「テスト前だからほぼほぼ自主練習なんでしょ? 早く終わらせてね」
「なんなら、勉強をして待っているといい」
「冗談」
は鼻で笑い飛ばしながら雑誌を閉じた。
ぐっと伸びをするのシャツの裾からちらりと肌色が見えた。
小さく溜息を吐きながら視線をそらす。やはり少し、気持ちは浮ついている。
「暇ならベンチに入るか」
「やーだよー、源田仕事させるじゃん」
「ベンチは客席じゃないからな」
「ほらー、もー、早く練習行ってこい。ここで待ってるから」
ばしん、とそこそこの力で背中を叩かれる。
痛っ、と咄嗟に発するものの差し当って支障はない。の手軽い暴力は親愛の表現方法の一つだ。
自分にとっては今ひとつピンと来ない。大切な人には優しくしたいし、まして暴力などもってのほかだ。
叩かれた背を撫でながら、ちらりと視界にを映す。
既に興味は手元の携帯端末に移行しているらしく、顔は見えない。
今度は隠すこともなく溜息を吐くと、グラウンドに続いている扉へ足を向けた。
本日の練習はハイペースでノルマを達成してやる。
まだ誰もいない練習場は静けさに溢れかえっていた。
源田幸次郎。
帝国学園サッカー部の正GK。
幼馴染の少女に、密やかながら恋慕している。
今のところ気付かれる様子は一切、ない。
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