はぁ、っとが両手に息を吹きかけた。
鼻の頭や頬と同様に、少し赤くなった指先は冷え切っているのだろう。
先程まで部員の使った飲料入れを洗浄していたと聞いた。この冬場に水仕事をしていたのだと思うと頭が上がらない。
やマネージャーたちが雑務をこなしてくれているおかげで滞ることなく部員がサッカーに専念できるのだと知っている身としては、心の底から感謝を示したい。
「」
「ん、なぁに?」
掌を擦り合わせながら、は再び息を吹きかける。
は嫌そうな顔ひとつしないで、マネージャーの仕事を手伝ってくれて助かっている、とマネージャーが喋っていたのをこの間耳にしたが、それは事実らしい。
もちろん、の性格をよく知っている自分はそれを聞いた時に「ああ、そうか」と納得したものだ。
とことん面倒見の良い性格をしている。少しばかりそれで損をしているような気さえする。
今だって、作業の邪魔にならぬよう纏め上げていたのだろう黒髪を背後で揺らしながら「なにか用事?」などと首を傾げている。
温めようとする行為を中断させ、下がり気味の両手を掴み上げる。自分の両手での手を挟み込んで握る。
わあ、と小さく間抜けな声が聞こえて苦笑した。
「修也くん、あったかいね」
「さっきまで動いてたからな。お前は冷えすぎだ」
思っていたよりも冷たい手に少なからず驚いた。
冷たい手を擦り合わせたところで大して暖かくもならないだろうに、は他の物や場所で暖をとる事もせず、作業の続きに取り掛かるつもりだったのだろう。
隣には洗い終えたばかりのタオルの山が置いてあった。
「ありがと、修也くん。随分あったまった」
「まだ冷たい」
「作業残ってるから、また冷えちゃうよ。修也くんも身体冷やさないうちに着替えてね」
困ったように笑ったの手に一層力を込める。
ぎゅっと何度か圧迫して、手を離した。
離れた両掌をは自身の頬に当てながら、へへへ、と笑う。
「あったかいよ」
幸せそうに口元を緩めるの頭をぽんと撫でた。
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